(具体例)
木造の店舗を借りるために権利金200万円を支払い、繰延資産として毎年償却してきました。
この繰延資産については、まだ、全額を償却し終わっていませんが、この度、家主の都合で鉄筋コンクリート造の建物に建て替えをすることになりました。
この新建物の新たな入居者は、相当額の権利金を支払わなければならないのですが、私はそれを支払うことなく、同程度の面積を借りることができます。
この場合、権利金の未償却残額は、全額必要経費に算入してもよいのでしょうか?
アドバイス
新築建物に権利金を支払わずに入居できるので、木造建物が取壊されたとしても、未償却残額の全額を一時に必要経費にすることはできません。
権利金の取り扱い
建物を借りるときに支出する権利金、立退料その他の費用は、繰延資産とされます。
この場合、その支出の効果が及ぶ期間で償却費を計算し必要経費に算入することになります。
資産が消滅した場合の未償却残額の取り扱い
取り壊しなどによって繰延資産の対象になっていた固定資産が消滅した場合は、その支出の効果もそれ以上には及ばないと考えられますので、未償却残額は除却損として必要経費にします。
質問の場合、新たに権利金を支出しないで新建物を借りることができますので、未償却残額を一時に必要経費にするのは適当ではありません。
理論的には、未償却残額を新建物の権利金として、新たな償却期間により償却すべきものと考えられます。
けれども、家主の都合で建替えられたもので、建替えによって新たな権利金の徴収が行なわれないなどの事情から考えますと、契約の条件に特別な変更がなければ、実質的には木造建物を引き続き借りているのと同じ状態にあるといえますので、従来の償却期間により償却してよいものと思われます。
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