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貸し渋り・貸し剥がし対策:「企業格付け」アップ作戦! Q&A

4. 『金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)』の読み方
Q01.『金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)』とは何ですか?(2003.12.15)
Q02.『金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)』にある16事例の内容のポイントを教えてください。(2003.12.16)

Q01. 『金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)』とは何ですか?(2003.12.15)

■『金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)』ができた経緯について教えてください?
「金融機関から『貸し渋り』や『貸し剥がし』を受けるのは、金融庁の検査や金融検査マニュアルが厳しすぎるためではないか」という声が、中小企業団体等から数多く寄せられました。
また政府の「早急に取り組むべきデフレ対応策(平成14年2月)」においても、債務者の経営実態の把握向上に資するため、中小・零細企業等の債務者区分の判断について、金融検査マニュアルの具体的な運用例を作成し、公表することが盛り込まれました。

これを受けて、金融庁は平成14年6月に『金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)』を公表したのです。

この「別冊」は、『金融検査マニュアル』(本冊)に新しいルールや考え方を追加するものではありませんが、中小企業の財務状況、資金繰り、収益力等により返済能力を総合的に判断する16の事例を掲載しています。

■『金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)』の内容は?
『金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)』では、自己査定や検査において、債務者区分を行う際の勘案すべき事項として、次のような現行金融検査マニュアルを補足する説明とその事例を記載しています。

○代表者等からの借入金が当面返済を要求されない場合、これを当該企業の自己資本相当分として判断する
○役員報酬や家賃の支払状況を加味して判断する
○代表者等の個人資産を加味して判断する
○技術力や販売力により業績の改善が見込まれる場合、これらを加味して判断する
○代表者等経営者個人の信用力や経営資質を加味して判断する
○業種の特性等を勘案して判断する
○経営改善計画がない場合でも、今後の業況の改善等の可能性を検討できる資料で判断する
○返済条件の変更の検証にあたっては、これを行ったことのみをもって債務者区分の変更を行わず、資金使途、変更理由を勘案して判断する

※出典:金融庁HP(http://www.fsa.go.jp/


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Q02. 『金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)』にある16事例の内容のポイントを教えてください。(2003.12.16)

『金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)』では、次の16事例が紹介されていて、一定の条件下における債務者区分の検証ポイントが記述されています。

これは、各金融機関が行った自己査定の内容が正しいかどうかを金融庁が検査する際の検証ポイントですが、これは裏返せば、各金融機関が企業を融資審査する際の検証ポイントとしてとらえることができます。

ですから、自社がこの事例に該当するような場合は、金融機関の融資担当者にそれを示すことで債務者区分を改善し、「格付け」をランクアップすることも可能です。

■16事例の要旨について教えてください?

事例1:企業の実質的な財務内容について


○概況:家電販売業者(シェア100%、借入額30百万円)

※「シェア」とは、金融機関から見たシェアを意味しています。この事例では、シェア100%ですので、この家電販売業者は他の金融機関からの借入がなく、100%その金融機関から融資を受けていることになります。(以下、同じです)

○業況:2期連続赤字、債務超過1期、延滞・条件変更なし。

○解説:代表者からの借入金について返済を当面要求しないことが認められ、これを自己資本相当額とみなすと資産超過になる。

○債務者区分の変更:要注意先→正常先

事例2:多額の代表者報酬により赤字になっていることについて

○概況:地元スーパーが顧客の広告代理業者(シェア55%、借入額100百万円)

○業況:多額の代表者報酬で2期連続赤字、繰越欠損金あり、延滞や条件変更なし。

○解説:赤字要因が多額の代表者報酬にあることが確認でき、返済が代表者個人の資産から賄われ正常に行われる。その際に、代表者個人の収支状況、借入金、第3者への保証債務の有無の確認がひつようである。

○債務者区分の変更:要注意先→正常先

事例3:代表者の資力を法人・個人一体とみることについて

○概況:不動産仲介、賃貸、戸建分譲の3分野を手掛ける不動産業者(シェア80%、借入額180百万円)

○業況:毎期赤字を計上、前期100百万円の実質債務超過、代表者資産あり、実質延滞、条件変更あり。

○解説:代表者の資産内容、返済能力、返済意思を確認したうえで検討する。

○債務者区分の変更:破綻懸念先→要注意先

事例4:代表者の長男の支援について

○概況:夫婦経営のパン屋(シェア100%、借入額20百万円)

○業況:大幅な赤字経営、3か月延滞、代表者の長男が返済し遅延解消、条件変更あり、代表者は事業継続意思あり。

○解説:代表者の長男と支援の意思、残債権の金額と支援者の資力、代表者と支援者との関係、親密度合い等を勘案して検討する。

○債務者区分の変更:破綻懸念先→要注意先

事例5:技術力について

○概況:家電メーカー向けプラスチック用金型受注製造業者(シェア100%、借入額100百万円)

○業況:毎期赤字、1期債務超過、条件変更による元本返済猶予、延滞はない。

○解説:現在出願中の特許権、実用新案権の存在が特許証明書等で確認できる。特許権等の存在のみにとどまらず、当該特許権等による新規受注の見込み、今後の収益拡大が見込まれるかを検討する。

○債務者区分の変更:破綻懸念先→要注意先

事例6:販売力について

○概況:タオル製品の製造、卸業者(シェア90%、借入額260百万円)

○業況:3期連続赤字、2期連続債務超過、条件変更あり、延滞なし。

○解説:今まで培ってきた販売ルートの強みを活かした新製品の拡販で今後の収益改善の効果が見込める。商品の評判、問合せや引き合い等が今後の収益改善にどのように寄与するのかなど、今後の需給見込等を踏まえた収益改善計画の妥当性により検討する。

○債務者区分の変更:破綻懸念先→要注意先

事例7:代表者等個人の信用力や経営資質について

○概況:家族経営のトラック運送業者(シェア100%、借入額8百万円)

○業況:返済が1〜2か月延滞、担保のほかに見るべき個人資産はない。代表者の健康回復。

○解説:代表者の信用力、経営資質。長男に後継意思あり。返済は遅ればせながらも続いている。今後、財務内容の改善や収益性の向上が具体的な経営改善計画やそれに代わる資料で見込まれる。

○債務者区分の変更:破綻懸念先→要注意先

事例8:業種の特性について

○概況:地元温泉地の中規模旅館(シェア80%、借入額400百万円)

○業況:毎期赤字、債務超過、現在正常に返済が行われている。

○解説:旅館業は新規設備投資や改築費用が多い業種。当初計画の80%以上を確保している。減価償却費の減少による利益計上の可能性あり。今後も正常返済が可能である。

○債務者区分の変更:要注意先→正常先

事例9:収支計画の具体性および実現可能性について

○概況:県内3店舗を有するラーメン専門店(シェア80%、借入額50百万円)

○業況:連続赤字、2期債務超過あり、条件変更あり、収支計画を策定、提出した(計画では3年後に約定返済開始予定)。

○解説:経営改善計画が合理的で、実現可能性が高い。1年経過後では計画比80%以上の実績で推移。2年後には約定弁済が見込まれるなど、業況の改善がほぼ計画に沿って進歩している。

○債務者区分の変更:破綻懸念先→要注意先

事例10:経営改善状況と今後の見通しについて

○概況:関東一円を事業区域とするトラック運送業者(シェア97%、借入額330百万円)

○業況:3期連続赤字、実質債務超過、元本返済猶予の条件変更、赤字幅縮小する見通し、来期には黒字計上。

○解説:金融機関が条件緩和をする際に、今後の収支見込み等を検討した事業計画に沿って業況が推移、借入金の約定返済に向けた動きが見込まれる。

○債務者区分の変更:破綻懸念先→要注意先

事例11:支援の意思と債権の可能性について

○概況:地場の土木建設業者(シェア80%、借入額2,000百万円)

○業況:毎期わずかな黒字、株式の含み損を加味すると実質債務超過が多額(8億円)、金利のみ支払いで元本返済猶予。

○解説:担保株式の価格好転を期待するだけでなく、有価証券の処理方針や企業債権の可能性を把握。本業の収益力の見通しを、現行の手持ち工事の状況、過去の実績に照らした今後の受注見込みに基づいて把握する必要がある。

○債務者区分の変更:破綻懸念先→要注意先

事例12:貸出条件およびその履行状況について


○概況:地場の小規模土木建設業者(シェア100%、借入額150百万円)

○業況:前期計上損失、すべて手貸で書換を繰り返す。一部本社建設資金、わずかな資産超過、今期例年並みの黒字確保(1百万円)

○解説:今期業況回復し黒字転換、延滞もない。企業・個人一体としての返済能力で判断、貸出金の真の資金使途、固定資産の内容、取得次期等についても確認する必要がある。

○債務者区分の変更:要注意先→正常先

事例13:貸出条件の変更に至った要因の検討について


○概況:賃貸ビル2階の個人事業者(シェア26%、借入額126百万円)

○業況:ビル建設資金に応需して取引開始。当初の元本の約定返済条件を大幅に減額(約70%減)、元本しわ寄せ(当初借入額の約50%相当)。元本・利息とも延滞なし、赤字なし。

○解説:貸出条件の変更を実施している債務者については、当該変更に至った要因を十分検討する必要がある。通常の借入期間の範囲内で返済条件、返済期間を変更している場合には、原則として貸出条件および履行状況に問題はない。

○債務者区分の変更:要注意先→正常先

事例14:書換継続中の手形貸付に係る貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)の取扱いについて

○概況:地場大手の衣料品製造卸売業者(シェア30%、借入額200百万円)

○業況:3期連続赤字、前期債務超過、ショッピングセンター建設予定地取得資金を手貸(金利は短プラ+0.1%)、建設予定地は現在更地で利用計画なし。

○解説:当該債務者と同等な信用リスクを有する債務者に対して、貸出金利が短プラであり、条件変更時の金利が上回っているならば、貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)に該当しない。

○債務者区分の変更:要管理債権先→要注意先

事例15:法定耐用年数内での期限延長を行った場合の貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)の取扱いについて

○概況:建設用木材卸売業、賃貸アパート業(シェア40%、借入額166百万円)

○業況:実質債務超過、アパート資金について返済額を大幅に軽減、最終返済期限を7年延長、金利は据え置き。

○解説:最終期限の延長が法定耐用年数以内に収まっていることをもって元本返済猶予債権に該当しないということではなく、信用格付け、および貸出金の保全状況や貸出期間(17年程度)等に応じた金利水準を上回っているかどうかがポイントになる。

○債務者区分の変更:要管理債権先→要注意先

事例16:信用保証協会保証付貸出金に対し、期限延長を行った場合の貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)の取扱いについて

○概況:中小出版社を取引先とする製本業者(シェア90%、借入額75百万円)

○業況:信用保証協会保証付貸出金(期間20年)について、返済金額を軽減し、最終返済期限を10年延長、金利は据え置き。今後短期間での売上の回復は困難。

○解説:信用保証協会付貸出金については、信用リスクは極めて低いので、調達コストを下回るような場合を除いて、原則として貸出条件緩和債権に該当しない。貸出金が優良保証や優良担保にフル保全されていれば、原則として適用される。

○債務者区分の変更:要注意先→正常先

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